Micrococcus luteus
Micrococcus luteusはグラム陽性球菌、非発酵性であり、Micrococcaceae科に属します。M. luteusは、増殖条件により、単球菌、二連になった双球菌、四連になった四連球菌、さらには不規則な集塊状として存在することがあります。偏性好気性菌であり、動物の皮膚や、粘膜、土壌や水などの環境中、およびホコリなどの無生物表面にも広く存在します。そのため、医療現場でも非常に頻繁に検出され、クリーンルームの定期モニタリングで検出される頻度が高い汚染菌の一つです。
Micrococcus属は、近年の分子生物学的手法の発展によって、従来この属に分類されていた多くの菌種が再分類された結果、現在はごく少数の種で構成されています。Micrococcus luteusはその代表的な種です。Micrococcusは一般的に非病原性とみなされていますが、特に環境要因、宿主側のリスク因子、医療介入(例えば、不衛生な状態での長期留置カテーテルの使用)が影響するような免疫抑制患者などの、特定の状況下では、病原性を示すことがあります。
M. luteusは、過酷な環境から身を守るための厚い芽胞を形成することはできません。ただし、M. luteusはバイオフィルムを形成することがあり、特にPseudomonas aeruginosaのような他のバイオフィルム形成菌と共存する場合はその傾向がみられます。
M. luteusによる感染症の重症度や経過はさまざまであり、しばしば宿主の防御因子に左右されます。症状は一般的に、菌が定着した部位における局所的な炎症として現れ、ごく稀に血流感染などの全身性感染に至ることがあります。
M. luteusの疫学調査では、検出された菌が患者において、汚染菌なのか、定着菌なのか、あるいは感染症の原因菌なのかを、適切に判断する必要があります。M. luteusは一般的な常在菌であるため、臨床検体中に持続的に存在することがあり、さまざまな抗菌薬治療に繰り返し曝露される可能性があります。そのため、薬剤耐性株の発現を防ぐために適切な対応が求められます。
内視鏡検査における病原体感染との関連性
消化器科:関連なし
呼吸器科:低
耳鼻咽喉科:関連なし
泌尿器科:低
内視鏡サーベイランスとの関連性
低リスク (Low concern organism)(Micrococcus luteusが多量に検出されることは、環境の清浄度の問題、あるいは内視鏡の取り扱い、乾燥、保管の不備を示唆します。)
感染経路
Micrococcus luteusは、土壌、水、動物の皮膚、ヒトの鼻咽頭領域、植物由来の物質、食品、およびホコリから検出されることがあります。[1][4]
感染経路は一般的に、保菌者との直接的な皮膚接触、または汚染された土壌、空気、水、作業台表面などの感染源であり、それらを介して感染が発生します。[2][4]
内視鏡検査中の感染リスクは、内視鏡の取り扱いや乾燥、保管の不備の影響を受けます。
感染事例は、徹底的な培養検査だけでなく、時には患者への負担を伴う検体採取を行わない限り、必ずしも確認できるわけではありません。また、十分に調査されているとも限りません。これは、Micrococcus属が一般に非病原性であり、ヒト宿主に相利共生の関係で定着するためです。このような関係性があるため、適切な評価を行わないと、M. luteusを汚染源や病原菌と誤認し、疫学的調査を混乱させる可能性があります。
抗菌薬に対する耐性
Micrococcus luteusは病原性が低く、報告されている感染症例も低いため、M. luteusにおける抗菌薬耐性に関する知見は非常に限られています。さらに発生頻度も低いため、本菌種に関するガイドラインも限られています。しかし少数の症例報告では、Kirby-Bauer法によるディスク拡散法やMALDI-TOF解析を用いて薬剤感受性の評価に成功した例が報告されています。[3][4]
出典と参考文献
Becker K, von Eiff C. Staphylococcus, Micrococcus, and Other Catalase-positive Cocci. In: Versalovic J, Carroll KC, Funke G, Jorgensen JH, Landry ML, Warnock DW, editors. Manual of Clinical Microbiology, 10th ed. Washington, D.C.: ASM Press, 2011.
Zhu M, Zhu Q, Yang Z, Liang Z. Clinical Characteristics of Patients with Micrococcus luteus Bloodstream Infection in a Chinese Tertiary-Care Hospital. Pol J Microbiol. 2021 Sep;70(3):321-326. doi: 10.33073/pjm-2021-030. Epub 2021 Sep 17. PMID: 34584526; PMCID: PMC8459002.
Young M, Artsatbanov V, Beller HR, Chandra G, Chater KF, Dover LG, Goh EB, Kahan T, Kaprelyants AS, Kyrpides N, Lapidus A, Lowry SR, Lykidis A, Mahillon J, Markowitz V, Mavromatis K, Mukamolova GV, Oren A, Rokem JS, Smith MC, Young DI, Greenblatt CL (2010). "Genome sequence of the Fleming strain of Micrococcus luteus, a simple free-living actinobacterium". Journal of Bacteriology. 192 (3): 841–860. doi:10.1128/JB.01254-09. PMC 2812450. PMID 19948807.
Madigan M; Martinko J, eds. (2005). Brock Biology of Microorganisms (11th ed.). Prentice Hall. ISBN 978-0-13-144329-7.