Neisseria spp.

Neisseria spp.は、グラム陰性球菌で、通常は双球菌として存在しますが、それ以外の形態がみられる場合もあります。この属の生息域は限られており、今のところ温血哺乳類からのみ分離されています。これまでに約30種のNeisseria spp.が特定されています。このうち特に注目されるのは、N. meningitidis(淋菌)とN. gonorrhoeae(髄膜炎菌)であり、この2種はヒトに特異的に生息し、また日和見病原体でもあります。これら2つの種は臨床的に重要である一方、文献ではこの属の他の種がヒトやその他の動物で疾患を引き起こす原因になるという記載はほとんどありません。

ヒトマイクロバイオーム

Neisseria spp.の保菌率は、地域や個人のライフステージによって違います。このため、ほとんどの種はヒト微生物叢において通常は常在菌とみなされており、特に口腔内をはじめとするさまざまな場所から分離されます。ただし、N. meningitidisは、鼻咽頭組織への定着を好む生態的特徴がある一方、N. gonorrhoeaeは泌尿器生殖系に定着します。これら2つの経路での交差汚染の記録があり、これはおそらく、N. meningitidisN. gonorrhoeaeの遺伝的関連性と、それらが適応する生息領域の選択メカニズムによるものです。ただし、活発な増殖は、それぞれの種の適応した特定の生息環境に限定されています。

臨床的関連性

N. siccaN. mucosaは、ヒトの口腔内の常在菌であり、通常は病原性が低いとされています。しかし、免疫不全症の患者では、髄膜炎、骨髄炎、心内膜炎、中耳炎、急性副鼻腔炎などの日和見感染症を引き起こす場合があります。臨床的に重要な種は、N. meningitidisN. gonorrhoeaeです。

  1. N. meningitidis は、中枢神経系に影響を及ぼして、髄膜炎と、髄膜の致死的な敗血症(髄膜炎菌血症)につながります。N. meningitidis は、ヒトの髄膜に感染を引き起こす能力と形態学的特徴から、髄膜炎菌と呼ばれることがよくあります。

  2. 一方で N. gonorrhoeae は、性感染症(STD)を引き起こします。N. gonorrhoeae は、生殖器や体液内で持続的に生存し繁殖できるため、ヒトの淋病を引き起こします。Neisseria の薬剤耐性メカニズムにより再発を繰り返すことがよくあります。

内視鏡検査における病原体感染との関連性

  • 消化器科:低

  • 呼吸器科:低

  • 耳鼻咽喉科:低

  • 泌尿器科:高

内視鏡サーベイランスとの関連性

  • 低リスクまたは中リスク(Low or moderate concern organism)

感染経路

N. gonorrhoeae

  • 性的接触による感染経路(精液、前駆精液、膣分泌液、分泌物などの生殖器官から分泌された体液との直接接触)

  • 口腔性交および肛門性交を介した感染

  • 垂直感染経路:感染した妊婦から新生児への出産時の感染(自然分娩における母子感染)

N. meningitidis:

  • この菌は飛沫感染および濃厚接触を介して伝播し、軍事基地、大学、学校などの混雑した環境では感染リスクが増加します。

薬剤耐性

Neisseria gonorrhoeaeの多くの株には、キノロンやペニシリン系の抗菌薬に耐性があり、選択できる薬剤が限られています。有効な治療効果を得るとともに、二次感染を最小限に抑えるために、抗菌薬の併用(セフトリアキソン+アジスロマイシンなど)が推奨されます。

Neisseria meningitidisの場合、かつてはペニシリンが抗菌薬の第一選択とされていました。しかし、ペニシリン耐性株の出現により、脳脊髄液移行性が優れているセフトリアキソン、セフォタキシム(両方ともセファロスポリン)、またはメロペネム(カルバペネム:臨床治療における最後手段とされる)が現在推奨されています。

免疫回避反応メカニズム

せん毛(Neisseriaの波状の尾)には、宿主細胞への付着およびヒト免疫反応(抗体)からの回避という機能を果たします。このせん毛は、単一細胞内でも、さまざまな組み合わせの無数の表面抗原を生成します。したがって、特定の抗原に対してヒト免疫系で産生された抗体は、このせん毛が生成したその他の表面抗原に対しては特異性をもたなくなります。

この抗原変異能力は、N. gonorrhoeae をワクチン開発の対象として非常に困難にさせています。N. gonorrhoeae に対する第IV相試験のワクチンは、ヒトでの有効性はわずか33%であると予測されています。

出典と参考文献

  1. Leah R Vincent, Anna E Jerse. Biological feasibility and importance of a gonorrhea vaccine for global public health. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6892272/#:~:text=Neisseria%20gonorrhoeae%20has%20historically%20challenged,infections%20without%20inducing%20protective%20immunity. 2024年12月にアクセス。

  2. Michael W Russell, Anne E Jerse, Scott D Gray-Owen. Progress Toward a Gonococcal Vaccine: The Way Forward. https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2019.02417/full. 2024年12月にアクセス。

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  6. Maria Victoria Humbert, Myron Christodoulides. Atypical, Yet Not Infrequent, Infections with Neisseria Species. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31861867/. 2024年12月にアクセス。