多剤耐性グラム陰性菌による感染症の増加

  • 多剤耐性グラム陰性菌による感染症は、罹患率と死亡率の上昇をもたらします。

  • 多剤耐性菌は、各系統の抗菌薬に対する耐性に基づいて分類されます。

  • カルバペネム耐性Acinetobacter baumannii、カルバペネム耐性Pseudomonas aeruginosa、カルバペネムと第三世代セファロスポリン系に対して耐性を持つ腸内細菌は、世界保健機関(WHO)によって特に危険であると分類されています[11]

近年、多剤耐性グラム陰性菌による感染症が世界中で急激に増加しています。特に外来患者および入院患者に対応する医療施設において、これらの病原体の増加が懸念されています。いくつかの研究で指摘されているように、十二指腸内視鏡検査による多剤耐性グラム陰性菌感染が目立つようになっています[2][6][8][9]

多剤耐性のさまざまな定義

多剤耐性の定義は国によって異なっています。しかし、さまざまな定義に共通していることは、抗菌薬に対する耐性に基づいて病原体を各種グループに分類していることです。ドイツ語圏においては、グラム陰性病原体の多剤耐性は、重症感染症の症例の一次治療薬として処方されるペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、フルオロキノロンの4つの抗菌薬グループに基づき評価されます。病原体は3MRGN、または4MRGNに分類されます。3MRGNは、グラム陰性病原体が上記4つの抗菌薬グループのうち3つに耐性があることを意味します。4MRGNは、4つの抗菌薬グループのすべてに対する耐性を示します。

その他にも、国際的な専門家委員会によって策定された、よく知られた定義があります。科学者らは、「多剤耐性」(MDR)、「広範囲薬剤耐性」(XDR)、および「汎薬剤耐性」(PDR)という用語を用いて耐性を説明します。これらの用語は定義が異なることも多く、共通の認識を得ることが困難になる場合もあります。そこで専門家グループは、微生物または微生物群ごとに個別の抗菌薬のカテゴリーを作成しました。これらのカテゴリーは、抗菌薬をより治療に適切なグループに分類するために用いられます。この専門家の定義によれば、MDRという用語は現在、病原体が3つ以上のカテゴリーの抗菌薬のうち、少なくとも1つの薬剤に耐性があることを意味します。XDRの場合、細菌の分離株は1つまたは2つのカテゴリーの抗菌薬に対してのみ感受性を示します。この定義において、PDRという用語は、病原体がすべてのカテゴリーの抗菌薬の、すべての薬剤に対して耐性があることを意味します。

脅威として分類されるカルバペネム耐性病原体

 薬剤耐性は、病原体の生存を可能にする細菌のさまざまな耐性機構によって引き起こされます。抗菌薬不活化酵素(β-ラクタマーゼ)の形成は、細菌が用いる最もよく知られた防御機構の1つです。Escherichia coliKlebsiella pneumoniae、およびPseudomonas aeruginosaAcinetobacter baumanniiなどの多剤耐性グラム陰性菌が特に蔓延しており、内視鏡検査に関与する可能性があります。これらの病原体は、医療施設において重篤かつ致死的な感染症を引き起こす可能性があります。

米国疾病管理予防センター(CDC)の推計によると、米国では毎年610人がカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が関与する感染症で死亡しています[1]。WHOは、カルバペネム耐性Acinetobacter baumanniiおよびカルバペネム耐性Pseudomonas aeruginosaとともに、カルバペネムや第三世代セファロスポリンに耐性を示す腸内細菌を特に脅威的な病原体として分類しており、これらに対する新しい抗菌薬の開発が早急に求められています[11]

プラスミドを介在した耐性機構

β-ラクタマーゼには、カルバペネマーゼも含まれており、ペニシリン、セファロスポリン、およびカルバペネムを分解することができます。これらの酵素は、アミノ酸配列に基づいて異なるグループ(クラスA~D)に分類されます。Extended spectrum β-lactamase(ESBL)および: Klebsiella pneumoniae carbapenemase(KPC)はクラスAに属し、Verona integron-encoded metallo-β-lactamase(VIM)とNew Delhi metallo-β-lactamase(NDM)はクラスBの例であり、OXA-48(オキサシリナーゼ)はクラスDに属します。

カルバペネマーゼ合成のための遺伝情報の多くはプラスミド上に存在するため、同種の細菌内だけでなく、腸内細菌科の異なる菌種や属の間でも伝達される可能性があります。KPCは主にKlebsiella pneumoniaeで検出されますが、Enterobacter spp.Citrobacter spp.Providenica spp.Morganella morganiiSerratia marcescens、およびEscherichia coliでも検出されることが増えています。したがって、プラスミドにコードされた耐性機構も、KPCの急速な蔓延に寄与しています。

出典と参考文献

  1. Antibiotic Resistance Threats in the United States, 2013, Centers for Disease Control and Prevention, https://www.cdc.gov/drugresistance/pdf/ar-threats-2013-508.pdf. 2021年6月23日にアクセスしました。

  2. Epstein L et al. New Delhi metallo-β-lactamase-producing carbapenem-resistant Escherichia coli associated with exposure to duodenoscopes. JAMA. 2014 Oct 8;312(14):1447–55.

  3. Exner M et al. Antibiotic resistance: What is so special about multidrug-resistant Gram-negative bacteria? GMS Hygiene and Infection Control 2017, Vol. 12.

  4. Galdys AL et al. Bronchoscope-associated clusters of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa and carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae. Infect Control Hosp Epidemiol. 2019 Jan;40(1):40–46.

  5. Hygienemaßnahmen bei Infektionen oder Besiedlung mit multiresistenten gramnegativen Stäbchen. Empfehlung der Kommission für Krankenhaushygiene und Infektionsprävention (KRINKO) beim Robert Koch-Institut (RKI) [Hygiene measures for infection or colonization with multidrug-resistant gramnegative bacilli. Commission recommendation for hospital hygiene and infection prevention (KRINKO) at the Robert Koch Institute (RKI)]. Bundesgesundheitsblatt Gesundheitsforschung Gesundheitsschutz. 2012 Oct;55(10):1311–54.

  6. Kola A et al. An outbreak of carbapenem-resistant OXA-48 - producing Klebsiella pneumonia associated to duodenoscopy. Antimicrob Resist Infect Control. 2015 Mar 25;4:8.

  7. Magiorakos AP et al. Multidrug-resistant, extensively drug-resistant and pandrug-resistant bacteria: an international expert proposal for interim standard definitions for acquired resistance, Clin Microbiol Infect 2012 Mar;18(3):268-81.

  8. Shenoy ES et al. Transmission of Mobile Colistin Resistance (mcr-1) by Duodenoscope. Clin Infect Dis. 2019 Apr 8;68(8):1327–1334.

  9. Verfaillie CJ et al. Withdrawal of a novel-design duodenoscope ends outbreak of a VIM-2-producing Pseudomonas aeruginosa. Endoscopy. 2015 Jun;47(6):493–502.

  10. Wendorf KA et al. Endoscopic retrograde cholangiopancreatography-associated AmpC Escherichia coli outbreak. Infect Control Hosp Epidemiol. 2015 Jun;36(6):634–42.

  11. WHO publishes list of bacteria for which new antibiotics are urgently needed, World Health Organization, https://www.who.int/news/item/27-02-2017-who-publishes-list-of-bacteria-for-which-new-antibiotics-are-urgently-needed. 2021年6月23日にアクセスしました。